超メモ帳(Web式)@復活

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統合失調症を患い、はてなからも逃亡。現在、復活のため準備中。


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『蜂蜜と遠雷』(恩田陸)がスゴ本だったので紹介したいんだが伝わるかどうか……。

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うーんどうだろう。「蜂蜜と遠雷」を紹介するのは今更な気がする。このブログではたまに書評も書いたりするんだが、書評系ブログにメンチ切るにはあまりにも僕の読書量は低い。まぁ僕は他にも恩田陸の本を読んだりはしているからそのあたりを切り口にしてダラダラと。。


でもどうなんだろう、「蜂蜜と遠雷」は微妙に書評書きにくいぞ、これ。扱ってるテーマがクラッシック音楽のピアノコンテストで、書く側としては文学とは違う音楽的な感覚を無理やり小説としてねじ込まないといけないあたりでかなり無理筋なんだが、恩田陸はそれに成功している。この本の読後感はオーケストラのコンサートを無事聞き終えたという感じ。そんな感じで音楽を文章化してしまうというハイコンテクストな内容なんで、感想もふわっとした感覚的なものになってしまうというか。具体的に何が良かったのか書きにくい。まぁいいや、帰納法的にずらずらっと抽象的な内容を書き連ねていくことで語ってみようか。


極めて女性作家的な内容だなと思った。類似する作家としては有川浩っぽい感じ。恋愛を扱いながらも直接的に絡ませるのはダラダラと拒絶して美味しい話にしてしまうのが似てる。「蜂蜜と遠雷」も恋愛小説として読める。亜夜とマサルと塵の三角関係のお話なんだけど、男性作家だったらこの距離感だとひとまずヤッちゃうと思う。特に、夜の練習室に塵が忍び込んできて二人で連弾してしまうシーンなんて、「もう、そこまでベタベタするならヤッちまえ!」と男性読者な僕は思うのです。どうも、恩田陸はこういう所でプラトニックにすることで読者を生殺しにしていくのです。対義的な作家は大藪春彦あたりかな。どんな無理筋な展開でもSEXをぶち込む。このあたりで男女間の恋愛観の違いが見えて面白いと思ったのです。「めんどくせーからさっさとどっちかとくっついちまえ!」を読みながら叫んだのです。


ここまで書いてきて思ったけど、恩田陸有川浩はホント似ているな。どっちもジュブナイル小説出身で直木賞絡み。有川浩直木賞取りかけたらしいんですわ。言い方は悪いけど、感性がなんかヲタク系女子寄りと言うか、ぶっちゃけると腐女子っぽい。ヤオイ本の評論を出した栗本薫ほどははっちゃけてはないけど、間違いなくその流れを汲んでいるだろう。出自のサブカル臭を無理やり文学性で否定している感じ。多分、ご両者のファンはそう言われると怒りそうな気がする。いや、僕の場合は賛辞でそういうことを言ってるんです。僕も小説書きでその劣化コピーっぽいところがあるから。


まぁ、問題は「蜂蜜と遠雷」ですよ。ペラペラとページを開いてみると2段組で500ページ近くある。枕に使えるぐらいの厚さはある。初見で重いかなーと思ったらイッキ読み。クラッシック音楽なんて難しい業界を扱ってるから難解かと思いきや、内容的には異能者バトル系のラノベ並に噛み砕いている。キャラ萌えで転がす感じで書かれているんですよ。風間塵という音楽の神様に愛された天才に触発されて、過去にコンサートを逃げ出した過去を持つ栄伝亜夜、複数の国のアイデンティティを持つハーフで正統派マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、年齢制限で後がない高島明石がそれぞれの才能を開花させる。第1次試験、第2次試験、第3次試験まであるんだけど、それぞれの個性にあったクラッシックの名曲を演奏していく。


演奏シーンが凄いんだわ。いや語彙が貧弱だな。演奏シーンで音が伝わらない小説でどんな風にピアノの熱演を描写するかはどれだけ難しいかは読者諸氏も分かるでしょう?それぞれのキャラクターのトラウマや過去のエピソードが演奏シーンでカタルシスを持って解かれていくのよ。これは作中で語られるラフマニノフのピアノ協奏曲3番じゃないけど、作者の妄想がダダ漏れする難しい心象描写のテクが求められる。描写だけじゃないな、プロットの組み方1つにしてもキャラクターの過去をきっちり掘り下げていないとできない表現の仕方だ。


マサルのショパンのワルツでは過剰描写ぐらいにやりすぎちゃってるんだけど、これぐらいやらないと伝わらない気がするな。ネタバレなんだけどショパンのワルツの音楽解釈で実際に物語の創作をしちゃったんですね。作者の自意識の介入としてはこれぐらいが限界な気がする。そもそも、文章で音楽を表現すること自体が無理筋なんである。音楽は瞬間の芸術であって文学は論理による理性への訴え。「蜂蜜と遠雷」は隔たりが大きすぎて作品として成り立つのかどうかさえ難しいテーマを見事に作品として昇華しちゃてるのよね。序盤の天才少女の挫折からラストの本選でのオーケストラに至るまでの文学のドラマツルギーと楽曲のモチーフの組み合わせで描写しちゃったのは、飛び道具じみて卑怯と表現したい。実際に使われている楽曲聞きながらだと10倍ぐらい楽しい。


まぁ、分厚い小説でクラッシック音楽を使っていて難しそうだと回避するのは間違っていますね。内容はラノベの異能者バトルですよ。天才たちがそれぞれの思惑と特殊能力を駆使して頂点を目指していくトーナメント方式です。読み方としては繰り出される楽曲の解釈と超絶技巧の描写を官能的に愉しめばいいだけです。僕は「蜂蜜と遠雷」はそんな風に読めたな。


蜜蜂と遠雷

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蜜蜂と遠雷 音楽集

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恩田陸だとこっちもブッチギリの恋愛小説でオススメ。


ライオンハート (新潮文庫)

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