超メモ帳(Web式)@復活

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「ネット炎上の研究」(田中辰雄・山口真一)を読んだ。

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ネット炎上に関する本ってのは色んな人が書いているけど、ここまで統計をきちんと取って論理的に論じている本はないだろう。内容に関しても炎上をただの悪いものとして扱って批判的に書くのではなく、これまでの歴史的な社会制度の立ち上げから「ネット炎上」という問題に対して多面的にアプローチするという方法を取っている。論文形式なので多少読みにくいのだが、webがどういう文化の流れの中に立っているかの社会学的な解説まであって深い領域まで達していると思う。読んでおいて損はないだろう。

 

さて、僕の立ち位置も含めてエッセイ的に「ネット炎上」について語らせていただこうかな。僕は2ch創立の頃にネオ麦茶のバスジャックからネットを始めたユーザだから、祭りと言うか炎上に対してはそれほど嫌悪感があるわけでもないんだ。この「ネット炎上の研究」でも「スカスカおせち事件」や「ペニーオークションステマ事件」を取り上げて炎上が消費者側に利益をもたらすことがあることも論じている。だが、「スマイリーキクチ中傷被害事件」のような無関係な他人に対して10年間も誹謗中傷が集中していたことなどもあるように、炎上は肯定されるべき現象というわけでもない。

 

一般的に炎上を起こしているユーザ像というのは「低学歴」「高齢童貞」「ヲタクで」「ネット廃人で」「過激な思想をもっている」「リアルでは孤立している」などの印象があるだろう。本書ではアンケートでどのような人物が炎上に関わるのかを統計であぶり出している。統計によって得られた知見では、炎上参加者の属性として「男性である」「若い」「子持ちである」「年収が多い」「ラジオ視聴時間が長い」「ソーシャルメディア利用時間が長い」「掲示板に書き込む」「インターネットで嫌な思いをしたことがある」「インターネット上では非難しあっても良いと考えている」といった特徴が得られた。

 

現在日本では年間400件ほどの炎上事件が発生しているという。つまりは1日1回以上ネットでは炎上が発生しているということだ。これだけ頻繁に炎上が起きているということはカジュアルに皆、他人を告発する監視社会が出来上がっているのではないかと思うだろうが、アンケートでは違った。

 

炎上を知っているユーザはネットユーザーの90%以上だが、炎上参加者はわずか約1.1%しかいないそうだ。尚且つ、この炎上参加者の大半は1度書き込んだだけなのが大半なのだ。つまりはtwitterなどで炎上案件に一言だけ書き込んだ人も統計に入っている。これから炎上対象者に粘着して繰り返し誹謗中傷を書き込むユーザは0.00Xまで比率が下がる。つまりは少数の過激なネットユーザだけが炎上事件を引き起こしているのであって殆どの人は書き込むことすらしていないのである。

 

ニコニコ動画川上量生氏の談によるのだが2chでも炎上事件の実行犯は極めて少数だという。

2ちゃんねるの管理人を長く勤めていた西村博之氏によると、『2ちゃんねる上のほとんどの炎上事件の実行犯は5人以内であり、たったひとりしかいない場合も珍しくない』らしい」(川上2014a p.24)


ネット炎上の研究 p.139

ニコニコ動画では時々、罵詈雑言、誹謗中傷のコメントが飛び交う。画面を見て反発が多いと思いがちだが、指定した人の字幕を全て表示しないという設定を行い、数人のコメントを消すと、荒れていた画面がとても平和になる。つまりひどいコメントを書き込む人は、実は少ない。少数の人が悪態の限りを尽くしたコメントを数多く書き込んでいるので、批判が多いと錯覚してしまうのだ。


ノイジーマイノリティがTVと世間をつまらなくする


これからは僕の経験を語らせていただこうかな。僕は割とネット原住民というかネットのパワーユーザーに近い位置にいる。2chのネットウォッチ板などに常駐していつも祭りを探していた時期もあった。その経験上から言っても炎上の実行犯ってのは1人か2人ぐらいしかいないです。炎上の実行犯ってのはスレに張り付いて対象に直接攻撃する奴ね。大概の書き込みってのは野次馬の一言だけでそこから続かない。まぁ2ch専用ブラウザなんかを持ってたらどのユーザがどれだけ書き込んだのか分かるんだけど、ID真っ赤にしている奴は多くても1つのスレで3人ぐらい。この少数が実際に誹謗中傷を書き散らしているんである。殆どの人は感想を一言だけ書き込んですぐ居なくなる。

 

本書では炎上は政府が対策していくべき事案として政策的対応を幾つか提示している。「①名誉毀損罪の非親告罪化」「②制限的本人確認充実」「③誹謗中傷(炎上)に関するインターネットリテラシー教育の充実」「④捜査機関における炎上への理解向上」「⑤炎上対処法の周知」。①と②は政府の恣意的な法運用で人権侵害を起こす可能性があるとして否定された。ネットリテラシーの教育が必要なのだ。

 

ネットはどんどん生活の中に浸透している。IoTなどで更に広がっていく可能性もあるだろう。だがコミュニティは少数の乱暴者によって掻き乱されている。本書では現状を本格的な情報社会へ移行していく過渡期だと位置づけている。僕は割りと楽観的に現状を見ている。科学とテクノロジーは更に進歩していく。解決策はあるはずだ。今のネット社会は未だ未完成なのだ。

 

 

 

ネット炎上の研究

ネット炎上の研究

 

 

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