超メモ帳(Web式)@復活

小説書いたり、絵を描いたり、プログラムやったりするブログ。統失プログラマ。


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素人物書き視点の読書の日々。

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今日は2冊の本を読んだ。書評というのもおこがましいが、軽く感想などをジャブをかましながら書いてみようと思う。僕は素人ながら物を書こうと志を持っている人間である。だから読書する時は、作者がどんな視点を持ちながらどういう風に書いたのかとか、この表現は盗めるだろうか?と考えながら読む。なので、僕のようなワナビweb同人作家がどんな視点で本を読むのか心境をここにスケッチしてみようと思う。


今日読んだのは『どくとるマンボウ航海記』北杜夫著と『このミステリーがひどい!』小谷野敦著である。


『どくとるマンボウ航海記』についてはいうまでもない古典に近い名著ですね。出版されたのも昭和40年だ。世界各地を航海して港に停泊して、色んな国の酒場などで巻き起こすドタバタを飄々とした文体で書いたエッセイである。北杜夫の代表作じゃないかな?今読んでみると流石に古いと思うけど、当時の世界の情勢などを知ることができて興味深い。例えば、ドイツは未だ東西に分かれていて東ドイツには入れなかったというエピソードが書かれていた。


昭和40年がどんな時代だったのか調べてみると、アメリカ軍のベトナム空爆があった時期だと知って流石にビビる。米ソ冷戦時代からのベトナム戦争時代か。2016年の現代からでは想像も出来ないぐらい昔だ。僕がビビるのはこの『どくとるマンボウ航海記』の描写は今でも通用するぐらい新しいのよ。時代掛かった表現とかぜんぜんなくて現代でも通用するぐらい表現が若い。これぐらい年を経たエッセイならば話題も陳腐化していそうだけど、普通に面白い。


北杜夫氏のぶっ飛んだ思考回路がそのまま溢れる言葉になって表現されている。躁鬱病らしいけど、さもありなんと言った感じだな。文章にもそんな感じが出てる。知識も豊富で、縦横無尽に古典を引っ張り出したりしてきて飽きない。


この『どくとるマンボウ航海記』を読もうと思ったのは、この本に限らずエッセイ本を読み漁っているからなんですよね。ブログで文章を書くために、読書した本から表現盗めないかなーと思っているのです。ここのブログで書いている文章は日記以上エッセイ未満の硬さの文章である。作家の文体の中で一番影響を受けているのは椎名誠の昭和軽薄体です。まぁ全然真似出来ていないんですけどね。シーナさんの文章はさらにぶっ飛んでいるから僕の文体は整い過ぎているぐらいだ。漢字の羅列文とか暴走していく妄想などを書いたらそれらしい物になっていくんだろうけど。


今回、北杜夫のエッセイに出会えたのは良かったな。シーナさんに連なるエッセイストの歴史を感じることができた。まぁ北杜夫は『夜と霧の隅で』で芥川賞も取ってるらしいから機会があったら読んでみよう。


次は小谷野敦著の『このミステリーがひどい!』か。なんだろうね、作者にゃ悪いが、読まなきゃ良かったなと思ったよ。僕がこんな評価を下す本は、読む時間が無駄だった場合と、読んでいて思考が毒されて機嫌が悪くなった場合の2種がある。この本は後者だ。大量の作品を持ち出してきて評論していくのだが、9割方は酷評である。しかも、小谷野氏がこの作品が嫌いだから駄目という風な納得できない評論であった。


しかし、ここであんまり小谷野氏の批判もしたくはないなぁ。小谷野敦氏ははてなに居るのである。作品をけちょんけちょんに酷評したら作者がエゴサしてきてバトル開始とかいう展開は僕が望んでいない。この本も自意識拗らせたはてな男子らしい文章で全編綴られていた。はてなっぽい文章だなぁと思ってググってみたら案の定だよ。まぁ、抑え気味に評論するから怒らないでね。


この本を見かけた時に連想したのが東野圭吾の『名探偵の掟』である。あれはミステリーの定石をあえて過剰に配置しまくる事で、既存のミステリーを徹底的に馬鹿にして笑い転げることができる作品だった。この『このミステリーがひどい!』もミステリー業界のパロディ本かな?と思って読んでみたんだけど、大真面目にコナン・ドイルあたりのミステリーから現代の警察小説までを取り上げて批評する本だった。読む対象を間違ったなと認識した辺りで読むのを止めときゃ良いんだけど、全編読んでしまった。小谷野氏はとにかく大量の作家の作品を読んでいる人だなぁということは分かった。でも評論の仕方に品がないよ。読者を納得させる理論展開ができていなくて「俺がこいつを嫌いだから駄目だ!」みたいなジャイアリズム溢れる批評だった。評論家にも読者を楽しませる芸が必要なんである。


ワナビ的にはこの手の評論家の本は毒でしか無くてね、読むと作品を書く気力が損なわれる。物を書く方は作品世界にひたすら没頭する事だけが求められる。ワナビが文壇周りとかその他周辺の知識ばかりを集めて頭でっかちになると、作品を書く方の感性は途端に失われる。浅田次郎がモンマルトルの絵描きとして表現していたけど、芸術家の振りをする事だけ上手くなって作品を全く描かない絵描きが生まれるのである。だから僕はあえて評論家の本は読まないようにしている。


まぁ、日本のサブカル史などを交えながらミステリーを批判的に知りたい人は読んでみても良いんじゃないですかね。大量の作家の裏事情を知ることは出来ますよ。


どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

このミステリーがひどい!

このミステリーがひどい!

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