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「嫌われる勇気」読了。


嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え


「嫌われる勇気」を読了した。なかなかに今の自分には必要な本だなと感じた。感想などを書いておきます。


この本をお勧めするタイプは、自分が嫌いで他者との人間関係も上手く行っていないと悩んでいる人ですね。益体のない自意識過剰にどの様に折り合いをつけるのか?と考え込む人には是非手にとっていただきたい一冊である。


僕は、自分は人間嫌いと信じていて、他の人とは絶対に分かり合えない。だから一人で生きていくんだと思っていて、高校生・大学生の時はいつも一人きりで図書館に篭っていました。ランボーやらボードレールを読む高二病を患わせた生徒でしたね。大自然書物が最高の友と本気で信じていました。
この本は哲人と青年が語り合うダイアログ形式で綴られています。この青年がまさしく過去の僕そのままでしたw 家族との関係をこじらせていて、他の人間を見下して、大学図書館に勤務しているひねくれ者の青年。その青年が、「世界とはシンプルなものである」と説いている哲人の元に議論を吹っかける為に訪れます。


この本は浅い自己啓発本とは違っていて、何か一つのことをすれば幸せになれるとか、幸せになるにはこういう考え方をしなさいみたいな具体的な方法論を語ってくれるわけではありません。表紙の帯に伊坂幸太郎が紹介文で、自分が語ろうとしている小説のようだと書いてありますが、まさしく小説の様な読了感でした。青年は哲人との語らいの中で悩みにぶつかりながらも自分が求めている真実にであい、最後には、仄暗き夜の闇の中を新雪を踏みしめながら歩き去っていきます。悩み多き青年のビルディングストーリとしても読めます。


この本ではアドラー心理学を中心に論じています。日本では精神分析フロイトや分析心理学のユングは有名ですが、アドラーはマイナーなイメージがあります。アドラーは、ユングと同じくフロイトの元で働いていた人ですが、学説の違いからフロイトと衝突して最後には喧嘩別れしています。ユングフロイトとは親子ほども年が違い、父親のようにフロイトを慕っていたのとは違い、アドラーフロイトとは同年代で同格として付き合っていた所に関係性の違いがあったのでしょう。
フロイト精神分析は臨床心理の祖として有名ですが、現在では臨床の場ではあんまり使われていません。現在のカウンセリングの場ではロジャーズの来談者中心療法が基礎理論として多く使われていますが、アドラーの個人心理学はロジャーズに多大な影響を与えたと言われています。


アドラーの個人心理学では、クライアントの悩みがトラウマなどの過去の出来事に起因するとの考えを否定します。アドラーの心理学で特徴的なのは目的論。クライアントは過去の出来事が原因で症状を発生しているのではなく、クライエント自身の意思で症状を選びとっているとする考え方です。
例えば、引きこもりの人がいるとして、精神分析などではその人がなぜ引きこもりになったのかと、父親の暴力に原因があったとか、母親の愛情がたりなかったとか過去の出来事に原因を求めます。しかし、アドラーの理論では、引きこもりの人は過去の出来事に原因があって引きこもっているのではなく、他人と関係を結ぶのが嫌だから自分自身の意志でもって引きこもりという症状を選びとっているのだと結論付けます。
本人が苦しいという症状を持っていたとしても、新しい環境に臨む不安と現状の環境の不満とでは、不満の方が楽だから人は症状をそのままにするのです。


アドラーはこのように、人は目的のために自分の感情をも利用することを喝破します。この本の中で語られる事は他人に認められたいという承認欲求をどの様に扱えば良いのか?など、自意識をどの様にコントロールするのかを青年と哲人、二人の語らいで分かりやすく解きほぐしてくれます。
人間が社会の中でどの様に考えて生きていくのか?人間の悩みは全て人間関係の中でしか生まれないことなど、自意識過剰気味な僕のような人間にとっては悩みの中心のことを徹底的に議論し尽くしている感じです。


アドラー心理学って実存主義っぽい学問だなと感じました。共通感覚の語りの部分ではキルケゴールの単独者のイメージを受けた。結局、人間は一人でその悩みに立ち向かい、行動する勇気を持つことが必要。アドラー心理学ではどうすればいいなどのアドバイスはせず、悩みを持つその人の隣に立って行動する事を見届けるだけなのです。
人間関係でも他人のコアになる部分には立ち入らず、その意思を尊重して認めてあげる。一見ドライに思える考え方ですが、理想の人間関係ってそんなものではないでしょうか?


僕はこの本でアドラー心理学に興味を持ちました。入門書としてはオススメな一冊でしょう。


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